令和元年度決算への意見表明

令和元年度決算に対する会派意見(10月16日)

令和元年度決算認定に当たり、Setagayaあらたとして意見を申し上げます。

まず、コロナ禍の中、区民のために現場で全力で頑張られた職員、特に保健所の感染予防対応を担当された方々、定額給付金の事務に携わられた方々、コロナ対策の融資あっせん事務を担当された方々、一年で最も忙しい異動時期に転入届の窓口対応を担当された方々、それから、各所管において、目立たないかもしれませんが、コロナ対応を考えながら事務を担当された職員の皆様に心から感謝申し上げます。皆様方の献身的な努力なしには、世田谷区政は年度当初のこのコロナ禍を乗り切ってはいけなかった、そのように感じます。

しかし、皆様の御努力とは裏腹に、果たしてこの世田谷区には司令塔がいたのかと疑問を持たざるを得ません。今申し上げた皆様の前には区民がいらっしゃった、皆様は区民のために全力を尽くしたという実感を持っていらっしゃると思います。しかし、区全体としてはどうか。

今回の対応の中で、区全体として区民のことを本当に考えられていたのでしょうか。このことについて質問したところ、区長が区民の要望に十分に応え切れなかったことについて、責任者として深く反省するとともに、今後の改善を約束しておわびすると言われました。

さらに、皆様方が体験されたように、ある部署に非常に負荷が集中したことについて質問しましたら、区長は、チーム世田谷として、お互いが区民のために、お互いが感染しないように配慮しながら頑張っていける、一つの部署の限られた職員が集中的な負荷を被って、そして健康を損ねるということに絶対ならないように頑張っていくと答弁されたのです。この言葉が絵に描いた餅にならないように質問したところ、政策経営部長、総務部長の両部長がきちんと調査し、報告をすると申されました。

私たちの会派は、今の両部長の発言をしっかりと受け止め、今後このようなことがないよう、きちんと区の動きをチェックしていくことを職員の皆様にお約束をすることといたします。

今回の決算委員会の論議を通じて、区の基本的姿勢に疑問を持つこととなりました。その一つがふじみ荘廃止問題です。このことについては、区の主な理由は、改修経費等の財源問題のように感じられましたが、では、高齢者と、このところ充実を図っている青少年の居場所対策とは格差があり過ぎるという指摘をすると、回答がない、そして区民の声を聞くと言われます。私はこの区の姿勢を間違いと感じます。まず、基本的な区の方針、政策があり、そのことを明らかにしてから区民の御意見を聞く、このような基本的姿勢を持たずに区民の声を聞くということでは混乱するばかりです。区の反省を求めます。

区は丁寧な説明を行うと言われます。正しい姿勢と言えましょう。しかし、その正しさは内容がまともであることが大前提です。今回の問題では、途中から丁寧な説明を行うということで、代替施設機能として、千歳温水プール休憩室や総合運動場体育施設などが紹介され、バスで通うことが担当の丁寧な説明の内容でした。全くあきれ返るしかない。あきれる以上に怒りさえ覚えます。区は、高齢者の生活実態をどのように把握しているのか。七十、八十、九十代になってグループに入って活動しなさいというのですか、運動施設、ジムがありますからどうぞ御利用くださいというのですか、それを象徴的に高齢者の部活動参加、ジム通いの強制とはどういうことですかと言っているのです。全く信じられないような言葉が、区の言われる丁寧な説明の中から出てくる、これは高齢者の方々の生活実態、日頃の思いを知らないことが原因であり、根本から考え直すべきです。

また、認知症とともに生きる希望条例の問題です。このすばらしい名称の条例、特に前文で、子どもから大人までの全ての区民が、現在及び将来にわたって認知症とともに生きるという文言に賛成するものです。ところが、この条例についても丁寧な説明を受ける中で、区は今後の計画づくりに当たり、認知症とともに生きるということをかなり狭く捉えようとされています。その象徴が、これまで何年も課題とされてきた認知症の方が損害賠償を背負う場合の対応です。損害賠償をどのように負担するかは大きな問題であり、場合によっては保険料を負担できる余裕のある区民とない区民の格差をなお助長してしまう、このようなことが、せっかく認知症とともに生きる希望条例をつくった世田谷区の考えでしょうか。早急に結論を出すべきです。

今回の新型コロナは、地域社会を根本から変えていくこととなるでしょう。地域がその社会の変容を受け入れられるか、そして格差社会がなお顕著となり、二極化がなお進んでしまうのか、そのことに区は重大な関心を持たねばなりません。

地域全体でテレワークの普及と浸透が進むよう、区として基盤整備が必要であるし、さらには、まずは行政のデジタル化に向けて、ICTの本格的活用を視野に庁内横断型で取り組み、区政運営を活発化させるべきです。

一方で、このコロナ禍の中でも人と人とのつながりがなお重要であることは確認されたのであり、今後の地域行政の検討に当たっては、このコロナ禍の状況を検証し、真に必要な区民に身近な行政拠点とは何であるか、そのことを明らかにすべきです。

区は、財政難と言われますが、今ある施設機能をどのように有効に利用していくか、まずはそのことを真剣に考えるべきです。その象徴が、現在教育委員会所属の「Touch the World」です。現在の担当部門が一生懸命なのは理解できますが、全ての施設機能は、結局は区民全体のもの、区民全体から見た在り方の見直しを早急に進めるべきです。この観点からは、教育委員会が学校施設機能の管理の地域移管の可能性を表明されたことを評価いたします。今後、より幅広い検討を求めます。

これらのことを区民に分かっていただくためにも、広報の在り方を抜本的に見直し、世代を超えて、一人でも多くの区民に的確に情報が伝わる仕組みづくりを行うべきです。

以上のことを意見として申し上げ、決算認定に賛成をいたします。